2012/9.29 「あなたとわたし 1」〈ライブ編〉宮崎 floor R




たしか当日の一週間前ぐらいから台風が天気図からみえてきた。
うそやろ?
まさか来んやろ?いやどんげやろ? て
ずっと心配だったけど、やっぱ来やがった!

台風の心配だけじゃなく、集客のことも心配だった。
おれは後悔だけはしたくない。
三上さんの音楽の素晴らしさを
少しでも多くの人に伝えたくて
あらゆる告知の手段を試してみた。
その結果はまだはっきりと分からないが、
やるだけのことはやったという充実感はある。
でも、そんな充実感に浸ってるひまはない。

まず、ちゃんと飛行機が飛んでくれるか、
嵐のなか、お客さん来てくれるか。
でもそんな心配な顔しながら、三上さんを迎えたくない。
というか、やっぱりあの三上さんが
宮崎に来てくれるのがうれしいし楽しみ!
空港でワクワクしながら仲間と待っていた。

で、来なすった!

まぎれもないあの三上さん。
この嵐の中無事到着することが出来て
ほんとにうれしい。
約4ヶ月ぶりの再会。
宮崎空港で会えるなんて夢みたいだ。

三上さんは開口一番、
「台風の雨は暖かいね」と言った。
確かに、考えれば
台風は熱帯地域から生まれたもの。
今までそんなこと考えたこともなく、ハッとした。
三上さんはとにかく気づかされる言葉を話してくださる。
それがどれを聞いてもおもしろい!
整理しないといけないぐらいたくさん
胸に残る言葉をきかせていただいた。

そうしてこして開場!

ライブ一番手は【オガジ】
ロックンロールバンドマンで
ふだんはでっかい音でバリバリ音鳴らすんだけど、
この日はソロの弾き語りをした。
一人でステージに立ったことはなく、
緊張していてそれが伝わった。
なかなかこういった一人の人間の、精一杯の姿をみる機会はない。
とにかく一所懸命で、清々しさを感じた。
やっぱし良かった。
ありがっとう、オガ!
歌い方と曲のアレンジにオリジナリティを感じた。
あの声はオガにしか出せないと思う。

続いて、【くにやとまくら】
この日の演奏は手応えがあった。
終演後、三上さんから
「ヨーロッパの暗さがあるね」と
言われ、ナルホド!と思った。

くにまくはおれの作った曲を軸に演奏するけど、
あーしてこしてとかいわずにとにかく、
まくらを逃がすことだけにおれは気を払う。
逃がして逃がしてまくらがどこに飛んでいくのか、知るのがたまらない。
チラッとみたりして、あんなとこにとまった!てびっくりするのが好きだ。
この日もおもしろいところにとまっていた。
どこかでまくらが鳴らした鐘の音が印象的でおぼえている。

そうして大トリ、【三上寛】。
リハーサルのときからおれは感動した。
いつものこの場所の、ホームグランドから
あの三上さんのギターの音が。
心が震えた。

三上さんの演奏が始まり進むにつれ、ジワジワ会場が暑くなっていく。
パッと横のクーラーを見ると、スイッチはちゃんとついてある。
じっと観ているだけなのに、暑い。
なんじゃこら すさまじいパワーだ。
三上さんが額を拭った腕から汗が一滴落ちるのをみる。



どこかの曲の途中で、三上さんはタイムストップしたみたいに
一瞬ポーズを決めるときがある。歌舞伎の見得のように。
あれが最高にかっこいい。
あれは経験未熟なモノでは出来ない、
それこそ【見栄】をはってしまう危うい技だ。

しかしなぜ、あの歌唱法とギターの演奏で全てが成立するのだろうか。
自由に空を飛んでいるかのような演奏。
三上さんがドラゴンにみえる。
分からない、なぜあそこまで出来るのか。

でもおれは、三上さんと過ごした時間の中で
少しづつその謎が解けていくような、そんな気持ちになった。

<遊び編>につづく